Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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がらすどのうち

硝子戸の中

夏目 漱石

Lesen Sie 硝子戸の中 (がらすどのうち) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.702 Zeichen · 105 Bildschirme

Aozora Bunko

十

すると廊下伝に室の入口まで来た彼は、座蒲団の上にきちんと坐っている私の姿を見るや否や、「いやに澄ましているな」と云った。

その時向の言葉が終るか終らないうちに「うん」という返事がいつか私の口を滑って出てしまった。どうして私の悪口を自分で肯定するようなこの挨拶が、それほど自然に、それほど雑作なく、それほど拘泥わらずに、するすると私の咽喉を滑り越したものだろうか。私はその時透明な好い心持がした。

十

向い合って座を占めたOと私とは、何より先に互の顔を見返して、そこにまだ昔しのままの面影が、懐かしい夢の記念のように残っているのを認めた。しかしそれはあたかも古い心が新しい気分の中にぼんやり織り込まれていると同じ事で、薄暗く一面に霞んでいた。恐ろしい「時」の威力に抵抗して、再びもとの姿に返る事は、二人にとってもう不可能であった。二人は別れてから今会うまでの間に挟まっている過去という不思議なものを顧みない訳に行かなかった。

Oは昔し林檎のように赤い頬と、人一倍大きな丸い眼と、それから女に適したほどふっくりした輪廓に包まれた顔をもっていた。今見てもやはり赤い頬と丸い眼と、同じく骨張らない輪廓の持主ではあるが、それが昔しとはどこか違っている。