Japanische Klassiker mit Furigana
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がらすどのうち
硝子戸の中
Lesen Sie 硝子戸の中 (がらすどのうち) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.702 Zeichen · 105 Bildschirme
次に会ったのはそれから幾日目だったろうか、楠緒さんが私に、「この間は失礼しました」と云ったので、私は私のありのままを話す気になった。
「実はどこの美くしい方かと思って見ていました。芸者じゃないかしらとも考えたのです」
その時楠緒さんが何と答えたか、私はたしかに覚えていないけれども、楠緒さんはちっとも顔を赧らめなかった。それから不愉快な表情も見せなかった。私の言葉をただそのままに受け取ったらしく思われた。
それからずっと経って、ある日楠緒さんがわざわざ早稲田へ訪ねて来てくれた事がある。しかるにあいにく私は妻と喧嘩をしていた。私は厭な顔をしたまま、書斎にじっと坐っていた。楠緒さんは妻と十分ばかり話をして帰って行った。
その日はそれですんだが、ほどなく私は西片町へ詫まりに出かけた。
「実は喧嘩をしていたのです。妻も定めて無愛想でしたろう。私はまた苦々しい顔を見せるのも失礼だと思って、わざと引込んでいたのです」
これに対する楠緒さんの挨拶も、今では遠い過去になって、もう呼び出す事のできないほど、記憶の底に沈んでしまった。
楠緒さんが死んだという報知の来たのは、たしか私が胃腸病院にいる頃であった。