Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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がらすどのうち

硝子戸の中

夏目 漱石

Lesen Sie 硝子戸の中 (がらすどのうち) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.702 Zeichen · 105 Bildschirme

Aozora Bunko

私はおもに自分の方から出かけないで、喜いちゃんの来るのを宅で待っていた。喜いちゃんはいくら私が行かないでも、きっと向うから来るにきまっていた。そうしてその来る所は、私の家の長屋を借りて、紙や筆を売る松さんの許であった。

喜いちゃんには父母がないようだったが、小供の私には、それがいっこう不思議とも思われなかった。おそらく訊いて見た事もなかったろう。したがって喜いちゃんがなぜ松さんの所へ来るのか、その訳さえも知らずにいた。これはずっと後で聞いた話であるが、この喜いちゃんの御父さんというのは、昔し銀座の役人か何かをしていた時、贋金を造ったとかいう嫌疑を受けて、入牢したまま死んでしまったのだという。それであとに取り残された細君が、喜いちゃんを先夫の家へ置いたなり、松さんの所へ再縁したのだから、喜いちゃんが時々生の母に会いに来るのは当り前の話であった。

何にも知らない私は、この事情を聞いた時ですら、別段変な感じも起さなかったくらいだから、喜いちゃんとふざけまわって遊ぶ頃に、彼の境遇などを考えた事はただの一度もなかった。

喜いちゃんも私も漢学が好きだったので、解りもしない癖に、よく文章の議論などをして面白がった。