Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
深雪と関助との道行きのあいだに長い一日もとうとう暮れて、その幕がすんだ時分には囲いの外はすっかり暗くなっていた。昼間のうちは殺風景だった小屋の中もいつしかぎっしり客が詰まって、さすがに芝居の夜らしい気分である。ちょうど晩飯の刻限なので、一層さかんな小宴会が彼方でも此方でも初まっている。度ぎつい電球が裸のままでところどころに吊ってあるから明るさも明るいが、眩しいことも非常に眩しい。それに舞台の照明と云うのが、脚光もなければ特別な装置があるのでもなく、同じ裸電燈が天井から垂れているばかりなので、やがて太功記十段目が開くと、人形の顔の胡粉が一度にきらきらと反射し出して、十次郎も初菊もまともに見ることが出来ないような奇観を呈した。しかし太夫はだんだん本職に近いような上手なのが床に上る。それを一方の桟敷から、「どうだ、わしの村の太夫はうまいもんだろう、みんな静かに聞いてくれ」と、同じ村の人らしいのが声援すると、「己の村の何々太夫はもっとうまいぞ、好い加減に引っ込んでくれ」と、一方の桟敷から罵声を飛ばす。酔った勢で見物人の大半がめいめい孰方かへ味方をして村と村との競争が夜が更けるほど激しくなる。