Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
お久なんぞのいる所でお談義を聴かされるのは真っ平だから」
二人は珍しくも面と向って互の眼の中を視詰めながら話しているのであるが、そのぎごちなさを隠そうとして殊更つけつけと物を云いながら細巻の金口を輪に吹いている妻の様子を、夫はいささか持てあまし気味に眺めていた。妻は自分では意識していないようだけれども、いつとはなしに顔や言葉でする感情の表わし方が昔と変って来ているのは、多分阿曽との対話の癖が出るのであろう。要はそれを見せられる時、彼女が最早や此処の家庭の者でないことを何より痛切に感じない訳には行かなかった。彼女の口にする一つの単語、一つの語尾にも「斯波」と云う家の持ち味がこびり着いていないものはないのに、それが夫の眼の前で新しい云い廻しに取り変えられて行きつつある、―――要は別離の悲しみがこう云う方面から襲って来ようとは思い設けてもいなかったので、もう直ぐ後に迫って来ている最後の場面の苦しさが今から予想されるのであった。だが考えれば、嘗て自分の妻たりし女は既にこの世にはいないのではないか。今さし向いに据わっている「美佐子」は全く別な人間になっているのではないか。