Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
弘は照れ隠しに又犬の前にしゃがんで、喉をさすってやりながらその横腹へ顔をあてて頬ずりをした。声の調子とその様子とが少し変だった。泣いているのかも知れないと大人たちは思った。家庭の中にどう云う事件が差し迫っているにもせよ、高夏がいるとみんなが呑気に冗談を云える心持になるのは事実であった。それは高夏がそう云う風に仕向けてくれるせいもあるのだが、一つには高夏だけが総べての事情を知っていてくれる、この人の前では芝居をするには及ばないと云うことが、夫婦の胸を軽くしてくれるせいでもあった。美佐子はほんとうに幾月ぶりで夫の高笑いを聞くのであろう。南を受けたヴェランダに差し向いの椅子に凭りかかり、子供と犬との戯れるのを眺めながら日を浴びているこの平和さ、―――夫が語り、妻が応じて、遠来の客を迎えつつあるこのまどかさは、世間を欺くと云う必要が除かれたために、却って自然の夫婦らしさがまだ幾らかは残っていることを示していた。そして夫婦は、これがいつまでつづくものではないにしても、こう云う場面に暫く自分たちを休らわせて、ほっと一と息入れたいのであった。
「面白いのかい、その本は? 大分熱心じゃないか」