Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
ません。
自分と背丈けから年恰好までよく似た下駄屋の若松を、自分の代りに両国へやって、相手の悪者をすっかり油断させた平次は、若松の家の裏口から、湯屋へ行くと見せて、敵の本拠を衝いたのは、まことに申し分のない兵法でした。
が、相手の女は一応その術に乗ったものの、何時如何なる時でも、身の安全を保つための動きを用意するといった、悪者の本能を持っていることもまた事実だったのです。平次の面上に手燭をたたきつける、行燈を蹴飛ばす、――それは実に一瞬に行われた動きで、次の瞬間にはもう、家の中は死の如く静まり返って、コトリとも音がしません。
うるしの闇の中に、平次はジッと耳をすましました。何処から何が飛んで来るかわからないので壁際に身を寄せて、蝙蝠のように平べったくなって、
「――」
暫らくすき間漏る稲光りのほかは一切の光りも失せ、轟く雷鳴の外には一切の音も絶えました。が、この闇に眼が馴れるに従って、開け放した入口から漏れて来る稲妻の光りに透して、次第々々に物のありかが見えて来そうな気がするのです。
相手もまたそれに気が付かない筈はありません。やや暫らく経つと、その危険を感じたらしい相手は、少しずつ、行動を起したことがわかって来るのでした。