Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
眼の前にあやかしが動くと、ほんの微かではあるが、畳に物の触る気はいがしてサヤサヤと絹摺れの音がするのです。
「――」
平次はゴクリと固唾を呑みました。絹というものの有難さを、この時ほど痛感したことはなかったのです。
やがてミシリと音がしました。梯子段を踏んだのでしょう。続いて次の段へ、そして三段目へ、その辺まで昇ると、相手は足音を殺すことのむずかしさを感じたらしく、急に態度を変えて、力一杯に梯子段を踏んで、ドンドンと駆け上がるではありませんか。
「待てッ」
続く平次、この時若し平次にたしなみがなかったら間違いもなく頭の鉢をたたき割られたことでしょう。女は梯子段の上から、後に続く平次を目がけて、何やら強かにたたき付けたのです。ガラガラガラ――とそれは実に恐ろしい音でした。恐らく逃げる間際に、火鉢の上の鉄瓶をさらって二階に駆け昇り、続く平次にそれを投げ付けたのでしょう。
恐ろしい機転です。それは実に十中八九までは間違いのない襲撃です。平次は早くもその事を予期して、梯子をなめるように、手と足とを使って這い上っていたために、鉄瓶は背中をかすって、梯子段の下に恐ろしい音を立てます。