Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
平家没落の時代から、この附近や壇ノ浦あたりには、総じて伝説が多く生れている。巌流島を繞る伝説も、波間の船人の口々からいろいろ伝えられているが、おもしろいのを二つ三つ拾ってみると、こんな話が残っている。
船人が、何かのことで、巌流島へ船を寄せても、巌流の墓石が見える時もあり、見えない時もある。――見えない時は凶事がある。見える時は運がいい。
また、すこし怪異めくが。
毎年、盆の十六日の晩には、巌流の墓石から、閃光を発して、火の玉が飛ぶ。すると対岸の小倉延命寺山のうえにある武蔵の碑からも、同じように火が飛んで、ふたつの火の玉が、年ごとに暗夜の宙で斬り合って消える……。
次の話はまた、近年なので、生存している者の口からいわれていることだそうであるが、それもなかなか妖気めいた説話で、いかにこの辺の海上生活者や海峡の雰囲気が、かつての要塞地以前、重工業の中心地以前にはロマンチストであったかが思われるのである。
その話というのは。
――つい大正年間、先に云った小船渠の従業者が、島に二、三十戸の部落を建てて住んでいたが、船渠が成り立たないので解散になり、住民もほかへ皆移ってしまったが、その後に、夫婦者の番人だけが残って一軒の小屋に住んでいた。