Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
翌日、曠野の只中に行き暮れた武蔵が、如何せんと辺りを伺うと、遥か彼方に仄な灯影が見られたので、近づいて見れば、軒傾いたいぶせき藁屋であった。
「行き暮れた旅の者、軒先なりとお借り申したい」
武蔵が案内を乞うと、
「昨日、泥鰌を所望された修行者にては在さぬか」
と云いながら出て来たのは、正しく泥鰌取りの童であった。
怜悧な少年は奇遇を喜び、薪をくべ、粟飯ながら夕餉をもてなす。
夜更くる頃、刃を磨ぐ音に眠りを破られた武蔵が、
(さては彼の童、夜盗の一味にてもあったか)
と、殊さら大きな欠伸をすると、次の間の少年は快げに笑って、
「刃を磨ぐ音に眠れぬとは、さても見掛けによらぬ臆病者じゃ」
という。
「怖ろしさに目を覚ましたわけではないが、何故この夜更けに、刃を磨ぐのじゃ」
少年は武蔵の不審に答えて、実は昨夜老父がみまかり、裏山の母の墓に並べて葬ろうと思うが、一人の力では屍体の持ち運びがかなわぬゆえ、これを挽き割らんと思案したのであると答える。
武蔵は童の胆力に感じて、共に手伝って、屍体を裏山へ運んで厚く葬ってやった。そしてこの孤児の胆力と怜悧を愛して、永く手許に養い、遊歴中も連れ歩いていたそうである。