Clásicos japoneses con furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lee 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 309.839 caracteres · 622 pantallas
劉備の声は、ふるえていた。母によろこばれたいばかりに、百難の中を、生命がけで持ってきた茶であった。
母は、歓びの余りに、気が狂れたのではあるまいか?
「……何をいうのです。譟がしい!」
母は、劉備の手を払った。
そして亡父のような顔をした。
「…………」
劉備は、きびしい母の眉に、思わず後ろへ退がった。生れてから初めて、母にも怖い姿があることを知った。
「阿備。お坐りなさい」
「……はい」
「お前が、わしを歓ばせるつもりで、はるばる苦労して持っておいでた茶を、河へ捨ててしもうた母の心がわかりますか」
「……わかりません。おっ母さん、玄徳は愚鈍です。どこが悪い、なにが気にいらぬと、叱って下さい。仰っしゃって下さい」
「いいえ!」
母は、つよく頭を振り、
「勘ちがいをおしでない。母は自分の気ままから叱るのではありません。――大事な剣を人手に渡すようなお前を育ててきたことを、わたしは母として、ご先祖にも、死んだお父さんにも、済まなく思うたからです」
「私が悪うございました」
「お黙りっ! ……そんな簡単に聞かれては、母の叱言がおまえに分っているとはいえません。――私が怒っているのは、お前の心根がいつのまにやら萎えしぼんで、楼桑村の水呑百姓になりきってしもうたかと――それが口惜しいのです。