Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lee 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 309.839 caracteres · 622 pantallas

Aozora Bunko

童学草舎

一

劉備は、手を伸ばした。

何か、おごそかな姿だった。

「享けましょう」

剣は、彼の手にかえった。

張飛は、いく度も、拝姿の礼を、くり返して、

「では、そのうちに、きっと楼桑村へ、お訪ねして参るぞ」

「おお、いつでも」

劉備は、今まで佩いていた剣と佩きかえて、前の物は、張飛へ戻した。それは張飛に救われた数年前に、取換えた物だったからである。

「日が暮れかけてきましたな。じゃあ、いずれまた」

夕闇の中を、劉備は先に、足を早めて別れ去った。風にふかれて行く水色の服は汚れていたが、剣は眼に見える黄昏の万象の中で、なによりも異彩を放って見えた。

「体に持っている気品というものは争えぬものだ。どこか貴公子の風がある」

張飛は見送りながら、独り虹橋の上に立ち暮れていたが、やがてわれにかえった顔をして、

「そうだ、雲長にも聞かせて、早く歓ばしてやろう」と、何処ともなく馳けだしたが、劉備とちがってこれはまた、一陣の風が黒い物となって飛んで行くようだった。

童学草舎

一

城壁の望楼で、今しがた、鼓が鳴った。

市は宵の燈となった。

張飛は一度、市の辻へ帰った。そして昼間ひろげていた猪の露店をしまい、猪の股や肉切り庖丁などを苞にくくって持つとまた馳けだした。