Clásicos japoneses con furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lee 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 309.839 caracteres · 622 pantallas
四
「いや、いつかは一度、お目にかかりに参る心ではいたが、その折には、ぜひ尊公に、うんと承知してもらいたいことがあるので――その準備がまだこっちにできていないからだ」
「この劉備に、お頼みとは、いったい何事ですか」
「劉君」
張飛は、鏡のような眼をした。らんらんとそのなかに胸中の炬火が燃えているのを劉備は認めた。
「尊公は今日、市で県城の布令を読まれたであろう」
「うむ。あの高札ですか」
「あれを見て、どう思われましたか。黄匪討伐の兵を募るという文を見て――」
「べつに、どうといって、なんの感じもありません」
「ない?」
張飛は、斬りこむような語気でいった。明らかに、激怒の血を、顔にうごかしてである。
けれど劉備は、
「はい。何も思いません。なぜなら、私には、ひとりの母がありますから。――従って、兵隊に出ようとは思いませんから」
水のように冷静にいった。
四
秋かぜが橋の下を吹く。
虹橋の下には、枯蓮の葉がからから鳴っていた。
びらっと、色羽の征箭が飛んだと見えたのは、水を離れた翡翠だった。
「嘘だっ」
張飛は、静かな話し相手へ、いきなり呶鳴って、腰かけていた橋の石欄から突っ立った。