Clásicos japoneses con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lee 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 209.260 caracteres · 418 pantallas
一方の佐々介三郎は、勝手を知っている老公の居間なので、いつもの通り錠口までかかると、杉戸の陰から、ふいに、
「何者だっ」
と、烈声をひとつ喰った。
見ると、侍側の加治与惣兵衛と、老臣の河合寸阿弥である。顔見あわせるなり、詫びるように、
「おお、佐々どのか」
と、声をひそめて、かさねていう。
「……お待ちかねだ。二度ほど、介三郎はまだかと、御意があった。……早く」
と、促す。
「ご免」
と、介三郎は通ってゆく。
ふたりはまだ後にのこって、錠口の出入りを、厳然と見はっていた。
「ただいま、もどりましてござりまする」
介三郎が、縁に手をつかえていうと、すぐ物のひびくように、
「帰ったか」と、老公の声であった。
「はいっ、ちと、遅う相なりましたが、諸事つつがなく」
「つつがなく運んだか」
「まずは」
「やれ……」
と、初めてほっとしたように、老公はつづいていった。
「大儀であった。はいれ、介三郎ずっとはいれ」
十七
そこには介三郎より前に他のふたりの臣が来ていた。
さきに、藤田将監のやしきへ向った組のひとり、秋山村右衛門と、綱条の重臣、阿部七兵衛であった。
ふたりの協力によって、将監の家から没収して来た古手紙や覚え書らしいものが、老公の膝のまえに、夥しく、選り分けられていた。