Clásicos japoneses con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas
慈母と厳父の両性愛を身ひとつに持って、二官はお蝶を育ててきました。
ところがどうしたのか、その今井二官が、ここ七日ばかりというもの、一言もお蝶と口をきかないで、むッつりと、むずかしい顔をしたきり、あまり食事も進まない。辞書の仕事にも筆がとれていない。
家の中は氷室です。
一ツ屋の棟の下に、親ひとり子ひとりが、別々に生きてるような淋しさと、たまらない――ワッと泣きだしたいような空気がこもりきっている。
――で分りました。
父の顔色を見るにさといお蝶は、それでにわかに、態度をかえているものと見えます。かれの機嫌が直るように、賢く努めているものと見える。
二官はこわい。
お蝶にも父親だけはこわい。
二官の盲愛か慈母になっている間は、甘えたい放題甘えますが、その顔色が厳父になっている時は、さすがなお蝶も寄りつくことができません。
チロ、チロ、と時々お蝶の目が、机によっている二官のうしろへ今もうごいて、
「なんで幾日も私に口をきかないのかしら? ……」
どこかで、やぶ鶯の鳴くのが静かです。
「お父さん」
呼んでみました。
「――お茶でも入れましょうか」
それにすら答えないで、二官は机から重い胸を離すと、黙然と、ひとりで自分の肩を二ツ三ツたたきながら、