Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
十三
乗れ。」
馬は卑弥呼と訶和郎を乗せて瀬を渡った。数羽の山鴨と雀の群れが柳の中から飛び立った。前には白雲を棚曳かせた連山が真菰と芒の穂の上に連っていた。
「かの山々は。」
「不弥の山。」
「追手は不弥へ廻るであろう。」
「廻るであろう。」
卑弥呼は訶和郎と共に不弥に残った兵士たちを集めて奴国へ征め入る計画を立てていた。しかし、二人を乗せた馬の頭は進むに従い、不弥を外れて耶馬台の方へ進んでいった。秋の光りは訶和郎の背中に廻った衣の結び目を中心として、羽毛の畑のような芒の穂波の上に明るく降り注いだ。そうして、微風が吹くと、一様に背を曲げる芒の上から、首を振りつつ進む馬の姿が一段と空に高まった。空では鷸子と鳶とが円く空中の持ち場を守って飛んでいた。
十三
その夜二人は数里の森と、二つの峰とを越して小山の原に到着した。そこには椎と蜜柑が茂っていた。猿は二人の頭の上を枝から枝へ飛び渡った。訶和郎は野犬と狼とを防ぐために、榾柮を焚いた。彼らは、数日来の経験から、追手の眼より野獣の牙を恐れねばならなかった。卑弥呼はひとり訶和郎に添って身を横たえながら目覚めていた。なぜなら、その夜は彼女の夜警の番であったから。