Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
四
「姫よ。」
「去れ。」
「姫よ。」
「去れ。」
「爾は我の命を奪うであろう。」
忽ち、兵士たちの鉾尖は、勾玉の垂れた若者の胸へ向って押し寄せた。若者は鉾尖の映った銀色の眼で卑弥呼を見詰めながら、再び戸外へ退けられた。そうして、彼は数人の兵士に守られつつ、月の光りに静まった萩と紫苑の花壇を通り、紫竹の茂った玉垣の間を白洲へぬけて、磯まで来ると、兵士たちの嘲笑とともにッと浜藻の上へ投げ出された。一連の波が襲って来た。そうして、彼の頭の上を乗り越えて消えて行くと、彼は漸く半身を起して宮殿の方を見続けた。
四
「王子は帰った。」
「呪禁師の言はあたった。」
「峠を越えて。」
「矛木のように痩せて帰った。」
奴国の宮は、山の麓の篠屋の中から騒ぎ始めた。そうして、この騒ぎは宮を横切って、宮殿の中へ這入って行くと、夜になって、神庫の前の庭園で盛大な饗宴となって変って来た。
松明を咬んだ火串は円形にその草野を包んで立てられた。集った宮人たちには、鹿の肉片と、松葉で造った麁酒やの酒が配られ、大夫や使部には、和稲から作った諸白酒が与えられた。そうして、宮の婦人たちは彼らの前で、まだ花咲かぬ忍冬を頭に巻いた鈿女となって、酒楽の唄を謡いながら踊り始めた。