Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
十九
彼女は入口に倒れている訶和郎を抱き上げるとそこから動こうともしなかった。
「王は爾を待っている。」と、再び使部は彼女にいった。
卑弥呼は訶和郎の胸から顔を上げて使部を見た。
「爾は王の前へ彼を伴なえ。」
「王は爾を伴えと我にいった。」
「王は彼を伴うを我に赦した。連れよ。」
使部は訶和郎の死体を背に負って引き返した。卑弥呼は乱れた髪と衣に、乾草の屑をたからせて使部の後から石の坂道を登っていった。若者たちは左右に路を開いて彼女の顔を覗いていた。そうして、彼女の姿が彼らの前を通り抜けて、高い麻の葉波の中に消えようとしたとき、初めて彼らの曲った腰は静に彼女の方へ動き出した。彼らの肩は狭い路の上で突き衝った。が、百合根を持った一人の若者は後の方で口を開いた。
「鹿の美女は森にいる。森へ行け。」
若者たちは再び彼の方を振り向くと、石窖の前から彼に従って森の中へ馳け込んだ。
十九
卑弥呼の足音が高縁の板をきしめて響いて来た。君長の反耶は、竹の遣戸を童男に開かせた。薄紅に染った萩の花壇の上には、霧の中で数羽の鶴が舞っていた。そうして、朝日を背負った一つの峰は、花壇の上で絶えず紫色の煙を吐いていた。