Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
「なんぞ過失でもおしやったか」
「お師匠さまのおそばにいてはわしのためにならぬ。家へ帰れと仰せられた」
「なぜかのう」と、翁は再び首をかしげた。「じゃが、お師匠さまがそう言わるれば、それも是非ない。して、これからはどうおしやる。叔父御も次第に年が寄って、この頃は思うように稼業もならぬと言うていた。お前の戻って来たは丁度幸いかもしれぬ。若い者はせいぜい働いて、叔父御や叔母御に孝行おしやれ。のう」
「おお、わしもそのつもりでこの頃は稼ぎに出る。あれを見やれ」
彼は表を指さすと、門口に烏帽子折りの荷がおろしてあった。翁はうなずいた。
「おお、よい、よい。昔の千枝まとは違うて、今では立派な若い男じゃ。まして子供の時から習いおぼえた職もある。怠らず稼いだら不自由はせぬ筈じゃ」
物に屈託しない翁は心から打ち解けたような笑顔を見せて、昔の千枝まと懐かしそうに話していた。千枝太郎もなつかしそうな眼をして家の中を見まわすと、今向かい合っている小さい窯も、奥に切ってある大きい炉も、落ちかかっているように傾いた棚も、すべて昔のさまとちっとも変わっていなかった。秋の日を浴びている翁の寂びたひたいにも皺の数が殖えていないらしかった。