Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
花の宴
一
播磨守泰親は陰陽博士安倍晴明が六代の孫で、天文亀卜算術の長として日本国に隠れのない名家である。その人の口からお前には怪異が憑いていると占われて、千枝松はいよいよ怖ろしくなった。
彼は泰親の前で何事もいつわらずに語った。泰親は眼をとじてしばらく勘考していたが、やがて又徐かに言った。
「その藻とやらいう女子の住み家はいずこじゃ。案内せい」
泰親はなにやら薬をとり出してくれた。それを飲むと千枝松は俄に神気がさわやかになった。彼は下部にたすけられて行綱の家の前までたどってゆくと、泰親は立ち停まって家のまわりを見廻した。それから更に眉を皺めて家の上を高く見あげた。
「凶宅じゃ」
柿の梢にはいつもの大きい鴉が啼いていた。
花の宴
一
それから年のこよみが四たび変わって、仁平二年の春が来た。
この三、四年は疫病神もどこへか封じ込められて、そのあらぶる手を人間の上に加えなかった。ややもすれば神輿を振り立てて暴れ出す延暦寺の山法師どもも、この頃はおとなしく斎の味噌汁をすすって経を読んでいるらしい。長巻のひかりも高足駄の音も都の人の夢を驚かさなかった。検非違使の吟味が厳しいので盗賊の噂も絶えた。