Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
三
玉藻は男の腕に手をかけて、怨めしそうに彼をみあげた。その眼には白い露がきらきらと光っていた。
三
いかに玉藻に口説かれても、千枝太郎は師匠の使命を果たさなければならない破目になっていた。無益の祈祷を幾たびもつづけて、罪に罪をかさねるのは悼ましいことの限りであるが、今更そんな諫言を肯くようなお師匠さまでないことは、彼にもよく判っていた。諫言を肯かないばかりでなく、あるいは心の弱い者として自分に勘当を申し渡されるかもしれない。千枝太郎はそれも怖ろしかった。
第一の問題は、玉藻が果たして魔性の者であるか無いかということで、それを確かに見きわめた上でなければ、あとへもさきへも踏み出すことが出来ないのであるが、今の千枝太郎は不幸にして、それを見定めるだけの大きい強い眼をもっていなかった。彼は師匠を信じながらも、師匠を疑おうとした。玉藻を疑っていながらも、玉藻を信じようとした。こうした悲しい矛盾に責められて、彼はもう自分の立ち場が判らなくなってきた。
相手もその苦しみを察しているらしく、眼をふさぎながら徐かに言った。
「お前の切ない破目もわたしはよく察している。