Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
三
おぼろ月が今宵はとりわけて霞んでいるらしく、軒に近い花のこずえも唯ぼんやりと薄白く仰がれた。
三
あかりの運ばれるのを合図に、頼長は席を起って帰った。気を置かれる人が立ち去ったので、若い人たちはいよいよ調子づいてきた。とりわけて左少弁兼輔はほっとした。脛に疵持つ彼は、頼長になにやら睨まれているような気がして、なるべくその傍へは寄り付かぬように努めていたが、もう誰に憚ることもない。玉藻のありかをもう一度たずねて、さっき言い残した話のかずかずを語りつづけようと、彼は酔いにまぎらせてよろよろと座を起った。
「あれ、あぶない」
酔いをたすける風をして、若い女房たちが左右から付きまつわって来るのを、彼はいつになくうるさそうに押しのけて、おぼろ月夜の庭さきへ迷い出たが、どこの木蔭にもそれらしい人の影は見えなかった。彼は餌をあさる狐のように、木の間をくぐって他の亭座敷をうろうろと覗いてあるいたが、どこの灯の下にも玉藻の輝いた顔は見つけ出されなかった。彼は失望して元の座敷へ戻ると、女房たちは待ちかねたように再び彼を取りまいた。
ここが一番広い座敷で、きょうの賓客のおもな者は大抵ここに席を占めていた。