Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

Lisez 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 786 caractères · 278 écrans

Aozora Bunko

われ若年のむかしより、兵法の道に心をかけ、十三歳にして、初めて勝負をなす、その相手新当流の有馬喜兵衛といふ、兵法者に打かち、十六歳にして、但馬国秋山といふ強力の兵法者に打勝ち、二十一歳にて、都に上り、天下の兵法者に逢ひて、数度の勝負を決すといへども、勝利を得ずといふ事なし。

その後、国々所々に至り、諸流の兵法に行逢ひ、六十余度まで勝負すといへども、一度もその利を失はず、その程、年十三より、二十八九までのことなり。

三十を越えて、跡をおもひ見るに、兵法至極して、勝つにはあらず、おのづから道の器用ありて、天理を離れざるが故か、又は、他流の兵法不足なる所にや。

その後猶も、深き道理を得んと、朝鍛夕錬してみれば、おのづから、兵法の道に会ふこと、我れ五十歳のころなり。それより以来は、尋ね入るべき道なくして、光陰をおくる。

兵法の理にまかせて、諸芸諸能の道となせば、万事において、我に師匠なし。いまこの書を作るといへども、仏法儒道の古語もからず、軍記軍法の古きことも用ゐず、この一流の見立、実の心をあらはすこと、天道と観世音とを鏡として、十月十日の夜、寅の一点に、筆を把りて、書き初めるものなり。