Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

Lisez 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 786 caractères · 278 écrans

Aozora Bunko

宮本村へ

宮本村へ

胸中山水という言葉がある。画人のためにつかわれているが、小説家にも実にこの胸中山水がある。いや或る地方に対しては、胸中故郷といっていいほどな思慕さえ抱いていながら、容易に行かれないでいる所は多い。

山陽線はよく通るが、滅多に途中で降りる機会がない。まして、岡山県英田郡讃甘村大字宮本――などとなると、これは上海や北京へ行くより遥かにやっかいだ。五万分ノ一地図で探し出すにも五分間ぐらいはかかる。因幡、美作、但馬、播磨あたりの緑色の斑点帯を、蚤の卵でも探すようにしてやっと見つかる山国の一部落だ。宮本武蔵が生れたという土地なのである。

新聞の連載小説を持っているあいだは、元日の朝でも、眼のさめるとたんに今日は――とすぐ頭へくる。自動車が衝突しそうな瞬間にも、危ないと思う咄嗟に、もう明日の紙上の責任を思うくらいなものである。その新聞小説を、朝日の紙上で、明くれば足掛け四年間にも亘って一主人公を題材に書いて来た。で、宮本武蔵の生地は、私にとっても、遂に胸中山水だけに止まらず、永い間一度は――と、そこへの旅行を宿題にしつづけていた胸中故郷の土地だった。