Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Lisez かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 91 006 caractères · 182 écrans

Aozora Bunko

「どちらへって、今夜は、本牧の方へ、船のお客を呼ぶ晩じゃないか」

「じゃ、そこへ、島崎さんをお連れして行ってもいいでしょうね」

「うん……。だが、来るかね」

「嫌だと言っても、連れてゆきますわ」

「よかろう」

夫人のお槙は、そういう間にも、ともすると見失いそうになる島崎の顔を、眼から離さないで、会話が終るとすぐに、彼のそばへ戻って来た。

そして、彼の耳へ背のびをして、

「いいこと。事務所の門の方へ、馬車を廻して置いてよ」

と、言いながら、手袋をぬいで、島崎の指先をつよく握りしめた。そして、もういちど、

「いいこと。分って、――薔薇色の馬車よ、薔薇色の」

と、念を押した。黄金色の埃の虹を立たして、根岸の競馬場に陽が沈みかけた。はるばると、東京から来て東京へ帰る俳優の羽左衛門だの、洗い髪のなにがしだの、仇っぽい名や、いかめしい著名の名士たちが、つかれて帰る群衆の眼に拾われながら、そこが暗くなるまで、人の崩れがやまないのである。

ひとりの従者を連れて、島崎は、合着のオーヴァの襟を立てて、事務所の門からこっそりと外へ出て来た。

贔屓の騎手を攫ってゆこうとする貴婦人たちの旨をうけた俥や、幾台もの馬車が、まだ根気よくそこに網を張っていた。