Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Lisez かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 91 006 caractères · 182 écrans

Aozora Bunko

いたいたしい、厳粛な光景が、人々の眼を打った。注射によって、わずかな時間の生を意識した盲目の病人は、からだを蔽っている白いきものを、無性にうごかそうとしている。ベッドの両方からは、トム公と、豆菊とが、母の胸へ、頬へ、まるで泣いてもいないように顔をすりつけてふるえていた。

細い、蝋細工みたいな指が、何ものかを、宙に探った。トム公の髪の毛をつかんだのである。片方の手には、豆菊の背をつよく抱えよせて、異様な、泣くとも歓喜ともつかない声を、咽から発した。

「ゆ……ゆるして! わたしが作った罪を、おまえたちの一生にまで、こんなに負わせてしまうなんて。……でも、女の一生って」と、きれぎれだった。「初めの一歩ね、貞操って、自分のために大事なものよ……そ、それを、お母さんは」

すこし息をついた。しかし、あわただしい死の督促が彼女の心臓をたたいたらしい。

「ふたりとも、堪忍してね。……堪忍してね」

わッと、トム公があるッたけの声を出して泣いた。

「おっ母あ……」

「お母あさん」

「おっ母あ。……おっ母あ」

「おっ、おっ……おっ母さん……」

直立していた主治医と看護婦とは、眼を見あわせてその枕元へ、無言のまま冷たい歩みを運びかけた。