Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
「危(あぶな)い。」とおりかはいって幸子を受けた。
「知らんのかお前、あれ叔父ちゃんえ。」
幸子はおりかの肩へ手を置いてやはり彼を眺めていた。
「お前忘れんぼやな、あれ叔父ちゃん。」
「叔父(おい)ちゃん。」と幸子は真似た。
彼は何ぜだか羞(はずか)しい気がした。黙って笑っていると、幸子はくるりと向うをむいて母親の襟(えり)の間へ顔を擦(す)り寄(よ)せた。
十五
彼は自分の幸子に対する愛情の種類を時々考えて、
「俺は恋をしてるんだ。」とまじめに思うことがあった。
彼のせめてもの望みは、幸子を一度、ただの一度でいいしっかりと抱いてやる、そして、彼女はぴったりと彼に抱かれることだった。更にそれ以上の慾をいえば、いつでも彼の欲する時に彼女が彼に抱かれることだった。実際彼はこのことに苦しめられた。しかし、彼の受けた愛の報酬もやはり前の夏の休暇と同じように冷(つめ)たいものであった。彼は幸子を憎く感じる日がだんだん増して来た。
「幸子はなぜ俺に抱かれないのだろう。」
と彼は姉に訊(たず)ねた時、姉は、
「お前あらっぽいからや。」とひと口でいった。