Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans

Aozora Bunko

」

萎れたマーガレットの花の傍から、彼女の母の泣き声が、歓声のように起った。

「キーボ、キーボ。」

「お母さんにもすまなかったわね。勘忍してね。兄さんにも、宜しくいって。それから、皆の人にも。」

「ああ、ああ、心配しないでいいよ、もう直ぐ皆のものが来るよ。」と母はいった。

「あたし、まだ、待たなくちゃならないかしら。苦しいんだけど。」

「もう直ぐだよ。さっき、電話をかけたんだからね、もう直ぐなんだから。」

「あたし、さきへ死ぬわ、もう、苦しくって。」

「よしよし、安心してればいい。何も心配しなくてもいい。」と彼はいった。

妻は頷くと眼を大きく開いたまま部屋の中を見廻した。一羽の鴉が、彼と母との啜り泣く声に交えて花園の上で啼き始めた。すると、彼の妻は、親しげな愛撫の微笑を洩らしながら咳いた。

「まア気の早い、鴉ね、もう啼いて。」

彼は、妻の、その天晴れ美事な心境に、呆然としてしまった。彼はもう涙が出なかった。

「さようなら。」と暫くして妻はいった。

「うむ、さようなら。」と彼は答えた。

「キーボ、キーボ。」と母は呼んだ。

しかし、彼女はもう答えなかった。彼女の呼吸は、ただ大きく吐き出す息ばかりになって来た。