Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
そうして、森からは弓材になる檀や槻や梓が切り出され、鹿矢の骨片の矢の根は征矢の雁股になった矢鏃ととり変えられた。猪の脂と松脂とを煮溜めた薬煉は弓弦を強めるために新らしく武器庫の前で製せられた。兵士たちは、この常とは変って悠々閑々とした戦いの準備を心竊に嗤っていた。しかし、彼らの一人として、娘を憶う兵部の宿禰の計画を洞察し得た者は、誰もなかった。
偵察兵の帰りを待つ長羅の顔は、興奮と熱意のために、再び以前のように男々しく逞しく輝き出した。彼は終日武器庫の前の広場で、馬を走らせながら剣を振り、敵陣めがけて突入する有様を真似ていた。しかし、卑弥呼を奪う日が、なお依然として判明せぬ焦燥さに耐え得ることが出来なくなると、彼は一人国境の方へ偵察兵を迎いに馬を走らせた。
或る日、長羅は国境の方から帰って来ると、泉の傍に立っていた兵部の宿禰の子の訶和郎が彼の方へ進んで来た。彼は長羅の馬の拡った鼻孔を指差して彼にいった。
「王子よ、爾は爾の馬に水を飲ましめよ。爾の馬の呼吸は切れている。」
長羅は彼に従って馬から降りた。そのとき、一人の乙女が垂れ下った柳の糸の中から、慄える両腕に水甕を持って現れた。