Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
大兄は卑弥呼を後に守って彼の前に立ち塞がった。
「爾は何故にここへ来た。」
と、大兄はいうと、彼の胸には長羅の剣が刺さっていた。彼は叫びを上げると、その剣を握って後へ反った。
「ああ、大兄。」
卑弥呼は良人を抱きかかえた。大兄の胸からは、血が赤い花のように噴き出した。長羅は卑弥呼の肩に手をかけた。
「卑弥呼。」
「ああ、大兄。」
卑狗の身体は卑弥呼の腕の中へ崩れかかって息が絶えた。
「我は爾を奪いに不弥へ来た。卑弥呼、我とともに爾は奴国へ来れ。」
長羅は卑弥呼を抱き寄せようとした。
「大兄、大兄。」と彼女はいいながら、卑狗の大兄を抱いたまま床の上へ泣き崩れた。
そのとき、奴国の兵士たちは血に濡れた剣を下げて、長羅の方へ乱入して来ると口々に叫び合った。
「我は王を殺した。」
「我は王妃を刺した。」
「不弥の鏡を我は奪った。」
「我は宝剣と玉を掠った。」
長羅は卑弥呼を床の上から抱き上げた。
「我は爾を奪う。」
彼は卑狗の大兄を卑弥呼の腕から踏み放すと、再び宮殿を突きぬけて広場の方へ馳け出した。卑弥呼は長羅の腕の中から、小枝を払ったの枝に、上顎をかけられた父と母との死体が魚のように下っているのを眼にとめた。