Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
我は爾を愛している。爾は我を愛するか。」
しかし、卑弥呼は大兄を見上げて黙ったまま片手で彼の頬を撫でていた。
「ああ、爾は月のように黙っている。冷たき月は欠けるであろう。爾は帰れ。」
大兄は卑弥呼を揺って睥まえた。が彼女は微笑しながら静に大兄の顔を見上て黙っていた。
「帰れ、帰れ。」
と大兄はいいつつ彼女を抱いた両腕に力を籠めた。卑弥呼は大兄の首へ手を巻いた。そうして、二人は黙っていた。月は青い光りを二人の上に投げながら、彼方の森からだんだん高く昇っていった。そのとき、一人の痩せた若者が、生薑を噛みつつ木樹の下へ現れた。彼は破れた軽い麻鞋を、水に浸った俵のように重々しく運びながら、次第に草玉の茂みの方へ近か寄って来た。卑狗の大兄は足音を聞くと立ち上った。
「爾は誰か?」
若者は立停ると、生薑を投げ捨てた手で剣の頭椎を握って黙っていた。
「爾は誰か。」と再び大兄はいった。
「我は路に迷える者。」
「爾は何処の者か。」
「我は旅の者、我に糧を与えよ。我は爾に剣と勾玉とを与えるであろう。」
大兄は卑弥呼の方へ振り向いて彼女にいった。
「爾の早き夜は不吉である。」
「大兄、旅の者に食を与えよ。