Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
我は爾らの上に日輪の如く輝くであろう。」
彼女は膝の上から反絵と反耶の頭を降ろして、静に彼女の部屋へ帰って来た。しかし、彼女はひとりになると、またも毎夜のように、幻の中で卑狗の大兄の匂を嗅いだ。彼は彼女を見詰めて微笑むと、立ちすくむ小鳥のような彼女の傍へ大手を拡げて近寄って来た。
「卑弥呼。卑弥呼。」
彼女は卑狗の囁を聞きながら、卑狗の波打つ胸の力を感じると、崩れる花束のように彼の胸の中へ身を投げた。
「ああ、大兄、大兄、爾は何処へ行った。」
彼女の身体は毛皮の上に倒れていた。しかし、その時、またも彼女の怨恨は、涙の底から急に浮び上った仇敵の長羅に向って猛然と勃発した。最早や彼女は、その胸に沸騰する狂おしい復讐の一念を圧伏していることが出来なくなった。
「大兄を返せ、大兄を返せ。」
彼女は立ち上った。そうして、きりきりと歯をきしませながら、円木の隙に刺された白鷺の尾羽根を次ぎ次ぎに引き脱いては捨てていった。しかし、再び彼女は彼女を呼ぶ卑狗の大兄の声を聞きつけた。彼女の身体は呆然と石像のように立ち停り、風に吹かれた衣のように円木の壁にしなだれかかると、再び抜き捨てられた白鷺の尾羽根の上へどっと倒れた。