Classiques japonais avec furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lisez 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 787 caractères · 177 écrans
第六番目の乙女が選ばれて立った。人々は恐怖を以て彼女の身の上を気遣った。その夜、彼らは乙女の自殺の報らせを聞く前に、神庫の前で宿禰が何者かに暗殺されたという報導を耳にした。しかし、長羅の横たわった身体は殆ど空虚に等しくなった王宮の中で、死人のように動かなかった。
或る日、一人の若者が、王宮の門前の榧のを見ると、疲れ切った体をその中へ馳け込ませてひとり叫んだ。
「不弥の女を我は見た。不弥の女を我は見た。」
若者の声に応じて出て来る者は誰もなかった。彼は高縁に差し込んだ太陽の光りを浴びて眠っている童男の傍を通りながら、王宮の奥深くへだんだんと這入っていった。
「不弥の女を我は見た。不弥の女は耶馬台にいる。」
長羅は若者の声を聞くと、矢の音を聞いた猪のように身を起した。彼の顔は赧らんだ。
「這入れ、這入れ。」しかし、彼の声はかすれていた。若者の呼び声は、長羅の部屋の前を通り越して、八尋殿へ突きあたり、そうして、再び彼の方へ戻って来た。長羅は蹌踉めきながら杉戸の方へ近寄った。
「這入れ、這入れ。」
若者は杉戸を開けると彼を見た。
「王子よ、不弥の女を我は見た。」
「よし、水を与えよ。