Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans

Aozora Bunko

「しばらく此処に待たれい。強く降らぬ間に笠を求めてまいる」

河原の柳の下蔭に玉藻をたたずませて置いて、彼は人家のある方へ小走りに急いで行った。雨の糸はだんだんに繁くなって、彼の踏んでゆく白い石の色も変わってきた。玉藻は薄い被衣を深くかぶって、濡れた柳の葉にその細い肩のあたりを弄らせながら立っていると、これも俄雨に追われたのであろう。立烏帽子のひたいに直衣の袖をかざしながら急ぎ足にここを通り過ぎる人があった。彼は柳のかげに佇んでいる女の顔を横眼に見ると、ひき戻されたように俄に立ち停まった。

玉藻もその人と顔をみあわせた。彼は千枝松であった。しばらく見ないうちに彼はもう立派な男になって、その男らしい顔がいよいよ男らしくなっていた。彼が昔の烏帽子折りでないことは、その清げな扮装を見てもすぐに覚られた。

しかし千枝松は黙って立っていた。玉藻も黙って眼を見合っていた。

「藻でないか」と、しばらくして男は声をかけながら近寄った。

藻と千枝松は四年振りでめぐり逢ったのである。勿論、男の方では女の消息をみな知っていた。関白どのに召されて寵愛を一身にあつめて、玉藻の前と世の人びとに持て囃されていることは、彼の耳にも眼にも触れていた。