Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
衝と出て来て、渡辺の綱のように彼女の腕をしっかりと掴んだ。
「あれ」
振り放そうともがいても、男はなかなかその手をゆるめなかった。彼は小声に力をこめて言った。
「騒がれな、玉藻の前。暗うても声に覚えがござろう。われらは実雅じゃ」
「おお。少将どのか」と、玉藻はほっとしたらしかった。「わたくしは又、鬼か盗人かと思うて……」
「その鬼よりも怖ろしいかもしれぬぞ」と、実雅は暗いなかであざ笑った。「お身はこの宵にどこへ参らるる」
玉藻は立ちすくんで黙っていた。
「法性寺詣でか、兼輔と連れ舞うて……。はは、何をおどろく。お身たちのすること為すこと、この実雅の耳へはみな筒抜けじゃ。われらが今宵、大納言師道卿の屋形へ歌物語を聴きにまいろうと存じて、四条のほとりへ来かかると、兼輔めが人待ち顔にたたずんでいる。何してじゃと問えば、これから法性寺へ叔父御の見舞いにゆくという。その慌てた口ぶりがどうやら胡乱に思われたので、五、六間も行き過ぎて又見返ると、彼はまだ行きもやらじに立ち明かしている。さてはここに連れの人を待ち合わせているのかと思うと、すぐに覚ったは玉藻の御、お身のことじゃ。