Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans

Aozora Bunko

して、その祈らるる当の相手はこの玉藻でござりましょう」

彼女の声は凜として河原にひびいた。泰親はすぐに打ち返して言った。

「それを御存じならば、なぜこの壇にうしろを見せらるるぞ。泰親の祈祷がそれほどに怖ろしゅうござるか」

玉藻は檜扇で口を掩いながら軽く笑った。

「わたくしが怖ろしいと申したのは、そのように呪詛調伏を巧らむ、人のこころが怖ろしいと申したのでござりまする。この身になんの陰りもない玉藻が、なんでお身たちの祈祷を恐れましょうぞ」

その恐れげのない証拠を眼のあたりに見せようとするのであろう。彼女は長い裳をするすると曳いて壇の前まで進み寄って来た。泰親は白い幣をとり直してまた言った。

「まずお身に問うことがござる。さきの夜、関白殿が花の宴のみぎりに、身の内より怪しき光りを放って嵐の闇を照らした者があるとか承る。神明仏陀ならば知らず、凡夫の身より光明を放つということ、泰親いまだその例を存ぜぬが、玉藻の御はなんと思わるるぞ」

玉藻はその無智をあざけるように、唇に薄い笑みをうかべた。

「播磨守殿ともあるべきお人が、それほどのことを御存じないか。そのむかしの光明皇后、衣通姫、これらの尊き人びとを、お身は人間にあらずと見らるるか。