Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
「関白殿の御牛車と申されても、それは代参、殊に女性じゃ。しばらくの御遠慮苦しゅうござるまい」
口でおだやかに言いながらも、すわといわば相手の轅を引っ掴んで押し戻しそうな勢いで、遠光は牛車の前に立ちはだかっていた。
紫糸毛の牛車のそばには、遠光のほかに逞しい侍が七、八人も控えていて、肉に食い入るほどに烏帽子の緒をかたく引き締めたあごをそらせて、こっちをきっと睨みつめていた。中にはその手をもう太刀の柄がしらにかけている者もあった。そのていが最初から喧嘩腰である。人数は対等でも、玉藻の供は相手ほどに精り抜いた侍どもではなかった。不意にこの喧嘩を売り掛けられて、彼らはすこしく怯んだ。
それにつけても、当人の玉藻がなんと言い出すかと、敵も味方も眼をあつめてその顔色をうかがっていると、玉藻はやがてしずかに言った。
「ほほ、これは異なことを承りまする。御代参とあれば関白家も同じこと、弟御の左大臣どのから遠慮のお指図を受きょう筈はござりませぬ」
彼女は供の侍を見かえって、一緒に来いと扇でまねいた。招かれて彼らはそのあとに続こうとするのを、遠光はあくまでもさえぎった。