Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
千枝まよ、わしと一緒に来やれ」
「よさっしゃれ」と、婆は例の白い眼をして言った。「子供じゃと思うても、藻ももう十四じゃ。どんな狐が付いていようも知れぬ。正直にそこらを探し廻って骨折り損じゃあるまいか」
千枝松はまたむっとした。しかしここで争っているのは無益だと賢くも思い直して、彼は無理無体に翁を表へ引っ張り出した。
「爺さま。狐の穴はどこじゃ」
「まあ、急くな。野良狐めが巣を食っているところはこのあたりにたくさんある。まず手近の森から探してみようよ」
翁は内へ引っ返して小さい鎌と鉈とを持ち出して来た。畜生めらをおどすには何か得物がなくてはならぬと、彼はその鉈を千枝松にわたして、自分は鎌を腰に挟んだ。そうして、田圃を隔てた向こうの小さい森を指さした。
「お前も知っていよう。あの森のあたりで時どきに狐火が飛ぶわ」
「ほんにそうじゃ」
二人は向こうの森へ急いで行った。落葉や枯草を踏みにじって、そこらを隈なく猟りあるいたが、藻の姿は見付からなかった。二人はそこを見捨てて、さらにその次の丘へ急いだ。千枝松は喉の嗄れるほどに藻の名を呼びながら歩いたが、声は遠い森に木谺するばかりで、どこからも人の返事はきこえなかった。