Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
彼は宇治へゆく途中の頼長に逢って、ひとつ牛車に乗せられて来たのであった。
「いよいよあすはかの古塚にむかって最後の祈祷を行なうことに決めた。左大臣殿は塚を発けと申さるる。それもよかろう。いずれにしてもあすは大事じゃ。怠るな」と、泰親はかさねておごそかに言い渡した。「千枝太郎、お身は今度の功によって、祈祷の数に加えてやるぞ」
千枝太郎は涙にむせんで師匠の恩を感謝した。その夜なかに彼は怪しい夢を見た。
場所はどこだか判らないが、彼は三浦の孫娘と連れ立って広い草原をあるいていた。そこには野菊や桔梗が咲き乱れて、秋の蝶がひらひらと舞っていた。二人は手を把って睦まじくあるいて来ると、草の中には陥穽でもあったらしい。衣笠のすがたは忽ち消えるように沈んでしまった。と思うと、入れ替わって玉藻の形がありありと現われた。
「三浦の娘に心を移そうとしてもそれは成らぬ。おまえと藻とは前の世からの約束がある。いかにわたしを仇にしようと思うても、所詮むすび付いた羈絆は離れぬ。今別れても再びめぐりあう時節があろう。これを覚えていてくだされ」
彼女は草の奥にある大きい怪しい形の石を指さして消えた。