Classiques japonais avec furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lisez 玉藻の前 (たまものまえ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 703 caractères · 261 écrans
彼女めが正体をあらわして飛び去るときに、憎いと思うものをとり殺していく。それはさもありげなことじゃが、なぜそれほどに衣笠どのに執念く禍いするか、それが判らぬ。殿様以ってのほかの御愁傷で、よその見る目もおいたわしい。こうと知らば大切の孫娘をわざわざ都までは連れまいものをとのお悔みも、さらさら御無理とも思われぬよ」と、小源二もさすがに鼻をつまらせて語った。
千枝太郎は新しい悲しみに囚われた。玉藻がなぜ衣笠の命を奪って行ったか、それは誰にも判ろう筈はないが、彼には思い当たることがないでもなかった。玉藻のおそろしい妬み――それが禍いのもとであるらしく思われてならなかった。三浦介が孫娘を連れて来たのを悔むとは又違った意味で、彼は三浦の宿所へ出入りしたのをしきりに悔んだ。彼は祈祷の前夜の怪しい夢を今更のように思い出した。
「思えばほんにおいたわしいことじゃ」と、千枝太郎もうるんだ眼瞼をしばたたいた。「方がたの御心中もお察し申す。われらがお悔み申し上ぐると、三浦の殿にもよろしゅうお取次ぎ下され」
小源二にわかれて、彼は暗い心持で土御門の屋敷に帰った。それでも日を経るにしたがって、彼の元気もだんだんに回復して来た。