Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
六
「何でもないでしょう、そんなことは」
伸子は、彼の情味の欠けた調子で、微かに傷けられた感じがした。
「何でもないこととは思わなくてよ。私は、そんな心持がしながら、こちらの女の人達のように、そういうことを平気で、純科学的に取扱えない心持が強くあるんですもの――自分や、何かこう晴れ晴れと高く美しいものに対して極りわるくて、――ね。……私には二つとも本当の気持だから――」
彼らは寄宿舎へ曲る横通りに出た。佃は、伸子を自分の心で被いかぶせるように云った。
「安心なさい。――私はあなたを苦しめるようなことは決してしません。そういう心持も、いつか変るかもしれないから……何も私は――解るでしょう? そういうことについても、少しは解っている積りです」
今になって、彼らは自分達が、かな氷のようになっているのに心づいた。彼らは寄宿舎のすぐ前にある喫茶店に入った。
佃は、もう灯を暗くした寄宿舎の玄関口まで、伸子を送った。
六
冬と春との入れかわる三月だ。天候はむらになって来た。朝ちらちら粉雪が降ったかと思うと、昼頃ぱっと日が照って、夜は濃やかな霧が市街を包む。次の日は風が強く吹いた。