Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

その姿を見ると、自分の胸に底潮のような悲しみと嫌悪の湧き起る彼に……。

「行っていらっしゃい」

頭を下げたが、彼女は直ぐその場から勢いよく立てなかった。

夫に対する愛と憎の輾転反側が伸子の心にまた力を盛りかえした。彼女はどこにいても苦しかった。それ故どこにか心の休憩所を欲して動きまわる。

伸子は、動坂へ屡々行き、泊った。

ある日、佃から動坂にいる伸子へ電話がかかって来た。

「明日帰られませんか、一寸――阪部君が二十八日に愈々立つと云ってきたから、御飯でも一緒にしたいと思う」

翌日、彼らは三人で夕食をたべに出かけた。すっかり初夏であった。夜空に、街路樹が軟らかな若葉をそよがせていた。彼らは、先日やや気まずく別れたわだかまりなどを忘れ、愉快にしゃべったり散歩したりした。伸子はその夜は赤坂へ戻った。

朝になると、昨夜は星が綺麗に見えていたのに、小糠雨が降っていた。その中に、とよが、傘もささず、池を覗いていた。

「どうしたの?」

「金魚が一匹妙なんでございます」

「どんなに?」

「今朝起きて見ますと、一匹やっと游ぐようなのを、皆が後からせッせと追いまわしておりますから、弱ったのを助けて游がせてやるのかと思ったら、いじめておりますんです」