Classici giapponesi con furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Leggi 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 150.635 caratteri · 306 schermate
兄弟子善鬼
一
「謙三郎。――謙三郎っ」
誰か彼を呼び起す者があった。
はっと頭を上げてみると、兄の静山が立っている。水のように立っているのだ。じっと自分を見ている容子は、在りし日の静山と少しも変りはない。
「……おっ。兄上」
「弟。どうだ」
「…………」
「そちの槍術は上達したか。槍の名家の跡目を嗣いで、嗤わるるようなことはあるまいな。兄も日ごとのそちの努力はよそながら観てはおるが」
「……?」
「わしも現世を去ってより正に三年、生を天上界にうけて霊福極まりないが、なお、憶念そちの身を案じ、愛恋の情をどうしようもないのはお前とも同じことである。どうだ、近頃の修業は、また心機の妙を得たか」
「……?」
「起てよ、謙三郎。別離三年、どれ程にそちが進歩しておるか。兄が試みてやる。はや身支度して道場に出よ」
茫然――現か夢かとそれまで聞いていた泥舟は、さては日頃、自分が余りに兄を恋い慕うので、心の煩悩につけ入って、狐狸か物の怪が、亡き兄の姿をかりて誑かしに来たなと覚えたので、
「だまれっ、変化、愚かな狐伎を演じておると、一刀の下に斬捨てるぞっ」
すると、水の如き、静山の姿は、
「弟よ。道理である。