Classici giapponesi con furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Leggi 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 150.635 caratteri · 306 schermate
八
長命で七十余年も生きたが、毎朝の稽古や素振りを死ぬまで怠らなかったなど、その人の並ならぬ心がけが、窺われる。ただ一度、七日ほど朝の稽古をしなかったことがあるので、門人たちが不審がって、
「お体でもお悪いのですか」
と、たずねたところ、二郎右衛門は笑って、
「いや、体がわるければ、なおやるよ。実は、将軍家から七日ほど過ぎに、わしの剣を御覧になりたいというお達しが参ったからじゃ」
と、云った。その気持が、門人達には、なお解せないので、
「近く御上覧の栄に浴されるなら、なおさらその日までは、稽古をお励みあって然るべきに、お沙汰を拝したからお止めになるとは、どういうお考えなのですか」
かさねて質すと、二郎右衛門はからからと笑って、
「さればよ。わしが十年二十年の稽古も、事あるときの唯一日の備えでしかない。七日や八日の急稽古をして、不覚な怪我でもいたしたなら、却って大なる不忠ではないか。総じて、間際と相成っては、はや稽古の日ではない。むしろ爪でも剪ったり、髪なども梳いて、その一日を、すずやかに待つべきものだ。生涯の修練が、滞りなく失念なく、その場で現わし得るように――」