Classici giapponesi con furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Leggi 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 150.635 caratteri · 306 schermate
二
「……迦羅奢。迦羅奢」
忠興は、自分の居間から呼んでいた。
局のほうと知って、やがて、自分から足を運んで行った。誰ひとり、召使すら迎えないのである。そして彼女の部屋を窺えば、そこにも侍女ひとり侍いていなかった。
「…………」
ただ見る――そこにひたと声もなく泣き伏している黒髪の人がある。
「迦羅奢! ……。迦羅奢っ」
「……はい」
ようやくに、彼女は面を上げて、眼の前に、ぬっくと突立っている良人の姿を見あげた。
「聞いたか」
忠興からそう云われて、彼女はまた、涸れはてている涙を顫きこぼした。――今朝、鏡の前にあった清麗も艶美も、嘘のものだったように彼女の面から掻消えていた。
「そなたに罪があるではないが、今日かぎり側には置かれぬ。おそらく、世の憎しみは、そなたにも降りかかろう。大逆人の血すじよ、光秀の娘よと、あらゆる辱めと、怒りにまかす仕返しの手がつき纒うであろう。――別離は、慈悲と思え。迦羅奢、山へ逃げろ、三戸野の山奥へでも落ちて行け」
「…………」
迦羅奢は、突然、大きく咽んで泣きはじめた。ふたりの子を生んだ母とはいえ、ようやく二十歳なのである。深窓にあれば、まだほんの妙齢という年頃にすぎないのである。