Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate

Aozora Bunko

「ふッさりと、藤が咲いたね。白と紫と……そよ風にうごくたび、いい匂いがする」

かれが独り言をいっているまに、お次は、あたりを見て、帯の間から、小さく折った手紙を、そっと、勘蔵の手のそばへおいた。

勘蔵は、黙って、庭向きに腰かけたまま、眼ばやく、読みくだしていたが、はッと、顔いろも変え、声も落して、

「お次さん。……おまえも行ったのか。堀へ」

「ええ。茶漬屋のおかみさんの口から、すっかり分ったと、左右太さまは、ひどく、武者ぶるいしておりましたが……。何か、そのお手紙にも、よい手がかりがあったと、書いてございましたか」

「うム。端緒は、つかめたらしいが、左右太ひとりで、その先の御隠殿下まで行くとあるのが、気がかりだ」

「どうしてです?」

「そこは、悪党の巣。ヘタをしたら、生命があぶない」

「えっ……左右太さまの、おいのちが」

お次は、唇を白くした。

かの女のまえで、無造作に、左右太の生命が、危ないなどといって、いじらしい恋仲を脅やかしたのを、こころない業とは思ったが、勘蔵の直感は、いつわりなく、

(左右太、危うし)

と、彼の心をも、ただならず、急きたてていた。

「お次さんも、一しょに来るか」