Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
一夜の団欒
一夜の団欒
「お母あ様。お父さまのお帰りっ……」
「お父さまっ。お父さまが、帰った。――お母あ様っ」
もう秋も近い日の庭垣根の辺り。
大岡家の前で、駕籠が降ろされた。
黒い塗り駕籠を出た人は――オオとなつかしむように、玄関前の敷石に佇み、ふと、庭木戸ごしに、この夏は、草も除らなかったらしい広庭の離々たる茂りをながめていたのを、ふと、眼ばやい子供たちが、彼方から見つけて、
「お父さまお父さま!」
と、手に持っていた朝顔や草の花を投げすてて、父の越前守の膝へとびついて来た。
「おお、雪子か。求太郎も、元気でいたか」
抱きよせて――子等の姿を見るのも、幾十日ぶりぞと、父の眼は、熱くなりかけた。
「父の留守中、ようおとなしく、遊んでいたの。雪子は、お稽古を励んでいたか。求太郎も勉強しておったか」
「ええ、毎日、お姉様も、私も、お勉強しています。お父様は……」
「お父様も、お役所で、お勉強していたのだよ。さて、きょう一日は、おいとまが出たので戻って来たぞ」
「うれしい。うれしい」
十二の雪子。九ツの求太郎。ふたりは、父の袂にぶら下がって、式台まで、離れなかった。
供の者の知らせで、屋内の人々は、みな玄関へ出迎えていた。