Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
石
雨の中の濡れ鷺のように黙っていた。
越前守は、ふと、眸をうごかして、
「左右太。縄を解いてやれ」
と、命じた。
左右太は、自分が救われたように、すぐ縄を解いて、うしろへ退がった。
「先頃来、夜々、市中をさまようて、公儀の御高札を仆し、狼藉を働きおった曲者は、たしかに、その方であろうな。こよいも、その現場から召捕られて来たということだが」
「…………」
「また、この春、堀留の呉服問屋山善へはいった五人組強盗の中に、そちもおったな。そちもその仲間であったな」
「…………」
衆目の中に置かれた、ただ一つの石のように、お袖は、何一つ答えもせず、何の表情も見せなかった。
「勘蔵。ちょっと、その調書を」
と、越前守はふと手を伸ばして、目安の机から一綴じの書類を取って、膝の上でひらいた。与力の一名が、燭台をかれの横へ寄せた。
冷々と、夜霧が白洲に下りている。夏の夜は明け易い。とこうする間に、東の空が白み出すのではあるまいか。
越前守は落ちつきこんで調書をめくり返していた。やがてそれを目安の手に返して、また、お袖に糺し初めた。
「仮吟味の事ゆえ、仔細の取調べは、他日といたしおく。