Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
木の葉虫
茶屋女たちに、おだてられ、男の意地みたいに、大羽子板だの、初春の櫛だの、やれ下駄だの、扱帯だのとねだられたあげく、小料理屋で飲んで喰って、すっかり財布の底をハタいてしまったいい気な客は、
「じゃあ、また、お正月に、顔を見せて下さいよ。お年玉をわすれずにね」
と、態よく、女たちから身限られて、忽然と、雑鬧の中で、独りになった。
「ばかにしてやがら。費わせるだけ費わせておきあがって」
男は、舌打ちして、観音堂の横に腰をおろした。たちまち、鳩が、寄って来た。その一羽を彼の足が蹴とばした。パッと、たくさんな砂つむじが舞い、観音堂の大廂に、鳩の傘がひろがった。
(なんていう気狂いだろう? ……)
その辺りにごろごろしていた無数の浮浪者たちは、懶げな眼を、彼の姿へあつめたが、またすぐ元の無力と惰眠のかたまりに返って、黒々と陽なたに闇を作っていた。
――すると、その中に、莚を体に巻き、木の葉虫みたいに眠っていた男がある。ふとこっちへ、擡げた首をぎょッと伸ばして、
「あっ。亀次」
と、口走った。鳩を蹴とばして、ぽかんと膝を抱いていた男も、振向いて、莚の木の葉虫と、顔を見合せ、びっくりして突ッ立った。