Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
ただ、夜々の虫のすだきを聞くたび、
「お燕は……?」
と、思い出しては、枕をぬらした。切々と、彼女の身のなかには、以前にもまさる母性の本能が強まっていた。尼院のしじまと、黙想とは、それひとつに、彼女の生命を、いまは燃えあつめさせていた。
「お燕は、つつがなく、暮らしておるよ。会わせてやろう」
それはもう晩秋だった。ぶらりと、訪ねて来て、彼女を連れ出した旅僧がある。――宇治の鉄淵の弟子で、鉄雲という僧。いうまでもなく、越前守の肉親の兄、以前、主殿といった人だ。
鉄雲は、びッこであった。その不自由な足をひきずりひきずり、権田原を抜けて、四谷の灯の方へ歩いた。
何町かは、分らない。四隣はみな、静かな小屋敷ばかりである。そこの辻を曲がり、路地の深まったつき当りの黒塀の下に立った。裏門と見える潜りが開いている。鉄雲はだまって、手招きした。
「はいっても、よいのでございますか」
それにも、鉄雲は、黙って、うなずいたきりである。お袖は、こわごわ、身を入れた。庭を斜めに、露草に濡れながら忍んで行く。
――と、窓が見えた。古風な、短檠とよぶ燭が灯っている。
「……あっ」
立ちすくんだまま、一瞬、身がふるえた。